こんにちは、ピコシムです。
先日、ある会社の新人研修に参加する機会がありました。
そこでは、
「社会人として時間を厳守しましょう」
「社会人として自覚と責任感を持ちましょう」
「社会人としてモラルやマナーを守りましょう」
「社会人として会社のルールを守りましょう」
という話がありました。よくある新人研修です。新人研修の目的は社会人としての自覚を持たせることです。
当たり前に使われている『社会人』ですが、上司やマナー講師によって使い方がバラバラです。
一体『社会人』って誰のことなの? 明確な回答を誰も持っていないので、調べてみました。
社会人とは誰のことか
社会人という言葉は外国語にはありません。
英語では、worker(労働者)です。ドイツ語や中国語にも社会人に相当する単語は見当たりません。
社会人の用語の定義
社会人とは誰のことをいうのでしょうか。
Weblio辞書によると、
社会人とは -
①学校や家庭などの保護から自立して,実社会で生活する人。 「卒業して-となる」
②(スポーツなどで)プロや学生ではなく,企業に籍を置いていること。
③社会を構成している一人の人間。
となっています。
正確な定義は言語学者に任せるとして、
世界で一般的な労働者の概念は、
であるのに対して、
社会人とは学生に対立する概念です。
下の表がピコシムが考える『社会人』の範囲です。(独断と偏見で超主観的にまとめた表です)
◎ は自分でも社会人と言うし◯、△、✕の人から社会人でしょ!とよく言われている
◯ は自分自身が社会人と呼ばれるが、◎の人よりは言われない
△ は自分自身が社会人と呼ばれるが、◯の人よりは言われない
✕ は自分のことを社会人とは言わないが、◎、◯、△の人には社会人でしょ!と言う。
明確に区別できる区分は、
学生を社会人と言わないし、
主婦を社会人と言わないし、
年金生活者が自分自身を社会人と言っているのを聞いたことがありません。
自分で稼いで独立生計を立てている人は、『社会人』と呼ばれています。
何が問題なのか
ザックリ言うと、社会人という言葉が乱用されすぎていて、労基法違反が横行していることです。
経営者や上司が労基法違反を積極的に行っている。
キャリアカウンセラー、マナー講師、社労士が労基法違法を幇助(手助け)している。
『社会人』という言葉にがどんなときに使われるのか、
- 学生と労働者を対比するときに社会人を使う
- 学生が労働者になるとき、社会人になると言う。
- 上司が部下に注意・指導する際に『社会人』を使う。
だから、言葉としてはこう使われていますよね。
- 学生さんですか? いいえ、社会人です。
- 来年から社会人になります。
- 大学を卒業したら社会人ですね。
- もう学生じゃないんだから、社会人としての自覚と責任を持つ必要がある。
- 社会人としての自覚が足りない。給料もらって働いてるんだろ!
このように、社会人という言葉は定義が曖昧で、使う側にとってとても便利です。
その時に、「社会人」を多用することで、労働者(奴隷)としての心構えを仕込むことが出来ます。
『社会人』という魔法のことばを使えば、長時間労働やサービス残業、労働基準法違反を労働者に強いることが出来ます。
都合がよくて大変便利な言葉ですね。
例えば、
上司「始業の30分前に職場に来て仕事の準備をするのは社会人の常識だ!」
部下「給料は出るんですか?」
上司「出るわけ無いだろ!まだ半人前なんだから、社会人としての義務を果たせるようになってから言え!」
上司 「A君、もう帰るのか。みんなまだ残業するのに!」
部下A「もう定時だから帰ります」
上司 「みんな早く帰りたいのに頑張ってやってる。社会人として仕事を手伝って残業するのは当然でしょ!」
上司 「朝礼開始は始業時間の15分前です」
部下 「タイムカード押す前に朝礼するんですか?」
上司 「社会人として始業前に朝礼をするのは当たり前だろ」
部下 「無給で働かせるのは労働基準法に違反してますよ」
上司 「残業代出ないことにイチイチ首突っ込むなよ、小学生じゃないんだから、社会人として常識でしょ。俺だってもらってないんだぞ!」
マナー講師「会社内では休憩時間は外出禁止です。休憩室では寝てはいけませんし、携帯電話でゲームをしてもいけません。これらはマナー違反です。もし休憩室にある仕事の電話がかかってきたら直ぐに応答しましょう」
新人 「それは休憩時間とは言わないんじゃないですか。」
マナー講師「あなたは社会人としての自覚が足りません。もう学生じゃないのですよ!」
これを読んだ感想は人によって分かれます。
- これは全部アウトじゃん。ブラック企業過ぎる。
- そのくらい社会人として当然!何が問題なの?
という人が出てきたことでしょう。
では、社会人という魔法の言葉に洗脳されている方々のために視点を変えてみましょう。
道路交通法は誰もが知っているのに、労働法は経営者も上司も、労働者も知らないし守らない
道路を使う時は「道路交通法」という法律によって定められています。
信号の赤は「止まれ」
信号の黄色は「注意して進むことができる」
信号の青は「進むことができる」
です。
そんなの幼稚園の子どもでも知ってるよ!とツッコんできたでしょう。
例えばカンボジアの首都プノンペンでは、道路交通の法律が正しく国民に知られておらず、誰も守らないので、
- 赤信号でも堂々と「信号無視」で交差点で事故多発
- 道路の逆走が頻発
- バイクが歩道を猛スピードで走行する
- 救急車がサイレンを鳴らして走行していても、一般車は路肩に停車しない
- ウインカーを出さず、割り込みが頻発
- 1台のバイクで4、5人乗り
- 排気ガス規制がないのでスモッグによる深刻な大気汚染
- 違反者が多すぎて警察官が取り締まりできない
など、日本や他の先進国の国々では考えられないことが每日起きています。
私が初めてプノンペンに行ったときは、本当にカオスな状態でした。
バイクに乗る時ヘルメットなんてつけなくていいでしょ?
Thanks Bun Sengkong for quoting me in his Phnom Penh Post piece on "Helmet use for children low despite Traffic... https://t.co/0SlmjToPyq
— Chariya EAR (@ChariyaEAR) 2016年6月2日
これを見て、なんて酷い国だ!と思ったことでしょう。多くの途上国の交通法順守の意識はこれが現状です。
法律を知らない、守られないと市民生活は大混乱します。交通事故の現場を見ない日はありませんでした。
なんて遅れている国なんだ!と思ったあなたは、他の労働法を守る国から見れば、日本の労働環境も狂っていると思われていますよ。
- 労基法に違反しても刑罰が軽いので、残業代未払いの方が良い
- 始業時間は絶対厳守、遅刻は絶対悪だが、終業時間は絶対守られない
- 残業をすればするほど人事評価が上がり出世する
- 法律よりも社内ルールの方が効力がある
- 誰も労基法の正しい内容を知らない
- あえて労基法を知っていても違反した方が自分のための良いと思っている
- 違反が多すぎて労働基準監督署は取締が出来ない
つまり、道路交通法では赤は止まれになっているけれど、我社の就業規則では、時間がない場合は赤信号を無視してでも進まなければならない!と言っているようなものです。
部下が、何で赤信号で止まらないのか上司に聞いたら、『社会人』なんだから赤信号を守らないのは当然だろ!と逆切れされたというアホな状態になっています。
労働法を順守している他の国の人達から見たら、日本はカンボジアのカオスな交通違反のように、とんでもなく労働法の遵法意識が育つのが遅れている国です。
国連からも長時間労働是正要求が出ていますが、日本政府は無視しまくっています。
一億層活躍する前に疲弊して玉砕しちゃうんじゃないの?
窃盗罪よりも軽い『不払い労働』
ご存知の通り、サービス残業(不払い労働)は、1時間働かせて2000円支払われないのと同じです。
スーパーで100円の商品を万引きしても、警察に通報されて「窃盗罪」になりますが、この国の労働者は、月に数千円~数十万円の賃金未払いがあっても、ほとんど問題になりません。
なぜなら、社会人として自分の仕事を賃金の支払いに関係なく、最後まで責任をもってやることは社会人として大切だとい信じられているからです。
コンビニで100円の商品を買おうとして、99円しか持っていなかったら、その商品は買えませんし買おうと思いません。お店は1円でも足りなければ当然売ってくれるわけがありません。
ところが、労働賃金になるとメチャクチャ適当になります。
ですが、「労基法24条違反」なのです。
賃金の支払(第24条)
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
となっています。
なぜ、適当になるのか。それは賃金未払いが窃盗罪よりも遥かに軽い刑罰になっているからです。
窃盗罪よりも全然刑罰が軽いのが特徴です。
それなら違反したほうがお得でしょ。と、経営者が考えるのは当然です。
さらに厄介なことに、労基法はほとんどの人が正しく知りませんし、正しく運用されていません。 無知を良いことに、知らない者に対して傷めつけるのは、PCデポと同じです。
面倒くさがって調べない人をカモにしてる、複雑な携帯電話料金と同じです。
労働問題の場合は、携帯電話よりも厄介なことに、自分で問題を解決しなきゃいけない。収入に直結する問題で、組織対個人の構図になって圧倒的不利です。
携帯電話は2年縛りですが、新卒社員は暗黙の3年縛りがあります。
3年間は同じ所に勤めなければ、自分の労働市場での価値が下がるということです。
もし、ブラック企業に入社してしまったら最後、
3年未満に仕事を辞めたら、忍耐強くない人だと烙印を押され、
運良く3年勤めたとしても、低賃金かつ残業代未払い、パワハラ、モラハラで精神疾患になって最悪復帰まで相当時間がかかることでしょう。
社会人という言葉は新人労働者を手懐けるための道具
先日記事で取り上げた、2000年前の古代ローマ時代の奴隷管理法について書いた著書、『奴隷のしつけ方』にはこう書いています。
新しい奴隷はまず奴隷という身分に慣れさなければいけない。
(中略)
(彼らは)自分が奴隷なのは仕方がないことだと悟り、惨めな境遇も少しは受け入れやすくなるだろう。
奴隷のしつけ方 第2章 奴隷の活用法
つまり現代に置き換えると、つい最近まで学生(自由身分)だった人たちの意識を、社会人に慣れさせなければいけません。
しかも、社会人という言葉は非常に曖昧で、労基法を経営者も上司も、部下も知らないため都合の良い社会人(奴隷)に育て上げるには最適です。
かつ、3年未満で辞めるとその人自身の人間性を疑われます。『石の上にも三年』ということわざを都合よく解釈されて、日本の社会人は世間体や労働市場の見えない鎖に繋がれて、安易に会社を辞められないようにしています。
奴隷についておさらいすると
現代の奴隷の定義は、
[1]自分の労働対価を得られず、経済搾取を受けている。
[2]搾取状態に陥る際、暴力・威嚇・恐怖によって囚われている。
となっています。
社畜ってもしかして、奴隷?と思った人は、ブログの最後にもリンクを張っておいたので見ておきましょう。
つまり、
-
社会人の定義が曖昧
-
社会人という用語の範囲が使用者によってバラバラ
-
社会人という用語を使うことで、新入社員を教育し違法な労働環境で仕事に従事させる
これによって、
- 日本の労働環境が他の先進国に比べて悪い
- ブラック企業(労基法違反)が多発
- 長時間労働、残業代未払いなど違法行為が社会に容認されている
それで、結果として労働生産性が低いです。
では、どのくらい生産性が低いかが問題です。
45年間も労働生産性順位が上がらない、データで見る労働生産性の低さ
日本の労働生産性は、OECD34カ国中21位です。
これは、
財政破綻で大問題になったギリシャ(19位)よありも、
何週間もバカンスに行くのが当然のフランス(7位)よりも、
日本人よりも休暇が多い陽気なイタリア(10位)よりも、
日曜日にはどの店も開かず、平日も8時半に閉店するドイツ(12位)よりも、
生産性が悪いってどういうことでしょうか。
(購買力平価(PPP)により換算)
これに、各国の労働者数の規模をバブルで表した図がこちら。
データ:2014年各国の労働人口 2014年OECD34カ国 労働生産性
日本は約6000万人の労働人口がいますが、2000万人以上の労働力を持つ国のアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、オーストラリア、スペインに負けています。
日本の労働生産性は1970年から常に主要先進7カ国の中で最下位でした。
バブル期の1990年でさえ最下位。
その頃、ニューヨークのシンボルだったエンパイアステートビルを三菱地所が買収して、アメリカ人のプライドを猛烈に傷つけた時でさえ、
24時間働けますか?って栄養ドリンクのCMを流していたイケイケの時代でさえ生産性が低かったのです。
絶対彼らから見たら
Japanese are CRAZY!(日本人は狂ってる!)と言われていたでしょう。
日本は1970年代の団塊世代のモーレツ社員が係長や課長になっていた頃から、労働生産性の順位が変わっていません。
1970年代当時は1$340円時代だからそりゃそうだろ!と思ってたあなたは鋭い。
ザックリ言うと、この数値は『購買力平価(PPP)』というもので、補正されています。
何かというと、為替レートは短期間の変動が激しいので、それぞれの国の商品価格を基準にした生活実感に近い値に修正したものです。
それでも、最下位のままです。私の父親や祖父の時代は何をしていたんでしょうか。
じゃあどうすれば良いのか?
1.解雇規制を撤廃する
解雇規制は撤廃しましょう。これは、劣悪な環境で働く労働者にとって朗報です。
なぜなら、転職が容易になるからです。ブラック企業には労働者が集まらなくなり、市場から退場することでしょう。
また入社3年目までは自己都合で退職すると、待ち受けているのは差別的な待遇です。新しい会社の面接試験で「忍耐強くなくすぐに辞める人」とレッテルが貼られ、採用されなくなれば非正規雇用での低賃金労働者へ転落します。
終身雇用制度は高度経済成長期の、人口が増加して売上が毎年上がり続けている時代に、会社が労働者を繋ぎ止めるための制度でした。
本来労働者は、労働契約によって個人と会社が契約するだけのものです。世界から見たら不思議な制度です。
2.会社の就業規則は公開を義務化しよう
日本の企業では多くの場合、入社後に初めて就業規則を目にします。
しかし、本来はwebなどで公開されるべきものです。定款が公開されて、四半期決算も公開されているのに、就業規則が公開されてないのは、おかしくないですかね。
なぜなら、働く上でどのようなルールがあるのか、制度化されているのか、社内規則に違法性があるかどうかが入社前に分かり、他社と比較できるからです。
また、もし社内規則に違法性があったり、運用に問題がある場合は、外部のステークホルダー(利害関係者)から指摘が入りやすくなります。
企業のコンプライアンスの遵守が、株主や投資家などのステークホルダーに求められている中で、四半期決算の他にも就業規則を労働観点のコンプラ遵守の一環で公開しては?
就業規則は労働基準監督署には届け出しているのですが、多くは社外への非公開が一般的です。
web上で公開されると困ることって何かあるのでしょうか?
3.テレビやネットで正しい労基法について国民に周知
法律が正しく運用されなくて、国民生活に多大な影響を与えているのなら、メディアを通じて広く国民に周知したほうが絶対に良いでしょう。
自転車でスマホ操作やイヤホンで音楽を聴く行為、雨の日の自転車で傘さしという、労基法違反よりはるかに優先度の低い問題は、瞬時に全国民に喚起されて、瞬く間に周知された実績があります。
特に国民総活躍社会を目指すなら、足元の労働環境を改善するのは急務なはず。
テレビで視聴率1%につき、200万円
ネットで100万PVごとに100万円
を、メディア事業者に減税や現金還付等のインセンティブを与える国の事業を始めてみてはどう?
スポンサーからの予算が少ない全国のテレビ局やネットメディアが興味を示して、良いコンテンツを作ってくれますよ。
4.労基法に点数制を導入してみる
車の免許には点数制になっています。持ち点から減らされる方式になっています。
それなら、
事業者の規模に応じて、違法に残業させたり、違法に賃金不払いがあったり、違法に人材派遣したり、違法に中間搾取したら、点数が加点されるようにしてみては?
20点で罰金、社名公開、50点で重加算罰金、労基署の調査、100点で経営者逮捕というのはどうですか?
労基法違反を経営者に教唆した、弁護士や社労士にも点数制を導入して、10点溜まったら悪徳業者として公表。30点溜まったら、免許剥奪ってどうでしょうか。
もちろん、適正に運用するために、公益通報制度の簡易版で、スマホで労働者が通報すると、労基署から現金やTポイントなどで還付される制度とかあったら、みんなやるかも。
5.小学生のときから正しい労働法について学習させる
私たちは小学生の時に社会のマナーについて教えられました。それと同じようにすればいいんじゃないの。
例えば、
ゴミのポイ捨てはいけません →残業代の未払いはいけません
信号は守りましょう →労働時間の始まる時間と終わる時間は守りましょう
交通事故にあったら110番しましょう →労基法違反にあったら労基署に電話しましょう
中学生や高校生になったら、基本的な法律や罰則について学ぶ時間が必要です。時間がかかりますが徐々に社会に労基法の遵法精神が芽生えるでしょう。
学校の先生も、放課後部活動の顧問をしたり持ち帰り残業が多すぎ。生徒から、先生それって労基法違反ですよと言われまくれば、校長や教育委員会が動くいて教師の労働環境が改善するかも。
6.小売店は日曜日は閉店。平日は夜8時で閉店、24時間営業も禁止。
ドイツでは、日曜日に店はほとんど空いていません。平日でも小売店の閉店は夜8時と早いです。ですが、労働生産性は日本より高いです。
ドイツではなぜ小売店の営業時間が法律によって定められているのだろうか。
「閉店法」が導入された背景として、大きく三つ挙げられる。一つは宗教的、文化的なものである。日曜日はキリスト教の安息日であり、宗教的観点からその慣習を保護することがその目的である。このため、教会は「閉店法」の緩和に一貫して反対してきた。
特筆すべき点は、メルボルン州が試験的に営業時間延長し24時間営業を許可したけど、売上が伸びなかった点です。
最後に
長時間労働させて、みんなで疲弊して国が滅ぶか、
夕方5時になったらぱっぱと切り上げて、子どもを迎えに行って家で家族団らんするか。
日本特有の『社会人』という呪縛から早く開放されて、多くの人が健康的な生活を送れるように、早くなるといいですね。
だって、45年間もOECD7カ国の中で最下位のまま、何ら変わってないのですから。
まさにこれ ↓
最後までお読み頂きありがとうございます!
次回もお楽しみに!
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