ピコシムのブログ

社会の出来事を「なぜ?だから何なの?」の視点で探ります

村八分の構造と貧困

こんにちはピコシムです。

先日、ある農村就業フォーラムに行った知り合いが、町役場の担当者から

「一生骨を埋め気でやろうと思っているのか?」

「農業は絶対儲からないから辞めたほうがいい!」

「外から来た人間は村八分されることがある」

と言われ、来場していたやる気のある都会の人たちが、次々に会場を去っていったという話を聞きました。

就農して過疎地の人口を増やす目的で開催されているはずなのですが、こういったブースはこの町役場だけではなく、ほとんどがそんな感じだったそうです。

町役場の人たちは営業経験がない?

就農者を増やそうとしているのか、就農しようとする人を追い返すためなのか、イマイチ就農フォーラム意図が読み取れませんが、

想像するにブースの役場の担当者が、

  • 自分の町、村に自信がない
  • 今まで上手く行った実績がない
  • 町長、村長から言われてしぶしぶやっている

のではと考えられます。

通常新規就農フォーラムを開いたら、そこで就農者20人の希望者を町や村に見学してもらって、今年は◯人定着させる!みたいな目標があるはず。

もしくは、予算消化のためにやっているだけで、別にもう過疎化はどうにもならないと担当者は悟っていて、今更都会から人を呼んできても迷惑と思っているのかも。

やる気のある町長、村長さんチャンスです!

他の町や村がそんな状態なわけですから、ウェルカムな状態で迎え入れるだけで他の自治体と差別化出来ます。

  • 町営住宅に格安で入居できます
  • 軽自動車の中古車を無償でレンタルします
  • 農業指導は懇切丁寧にさせていただきます
  • 保育園や幼稚園にも必ず入園できます

これだけで、隣のやる気のない町村のブースと差別化ができて大賑わい間違いなし。

村八分が起きるわけ

村八分というのは、いわゆる仲間はずれにする状態のことです。

1 有力者を中心に、上下関係の厳しい秩序を保ち、しきたりを守りながら、よそ者を受け入れようとしない排他的な村落。村の決まりに背くと「村八分」などの制裁がある。
同類が集まり、ピラミッド型の序列の中で、頂点に立つ者の指示や判断に従って行動したり、利益の分配を図ったりするような閉鎖的な組織・社会を1にたとえた語。談合組織・学界・政界・企業などに用いる。

村社会(ムラシャカイ)とは - コトバンク

 

僻み、妬み、やっかみ、既存の価値観に異を唱えたら、即絶縁というムラ社会特有の負の側面があります。

村八分は、時に地方と都会の対比に用いられ、学校や職場、特定のコミュニティでは、いじめや、パワハラ、モラハラと言い換えることができます。

不健全なコミュニティや組織で自分の意見を言うことは、組織の和を乱す(既得権益者、有力者にとって自分の立場を脅かす存在)と見做され、敵対され、異分子を排除する力学が強力に働きます。

第三者から客観的にみて、現状をより良い方へ導く意見だとしても、既得権益者や有力者にとって脅威以外何者でもありません。自分より優れた能力のある者の存在は自分の立場を脅かすからです。

僻みやっかみが孕む閉鎖性

具体的な例を見ていきましょう。

沖縄県のお互い足を引っ張り合う構図

www.okinawatimes.co.jp

沖縄県は日本で1番所得が低い県です。

単に経済格差が問題で、経営者が賃金を上げないことが問題かと思いましたが、それだけではありませんでした。

  • 周囲の目を気にするあまり、正社員への登用を断る
  • もし正社員になると僻みやっかみが発生し仲間はずれにされることへの恐怖
  • 現状維持が第一で、変えようとすると社会的圧力がかかる
  • 人間関係が悪化することで島にいられなくなる恐怖

また、実際に樋口氏が沖縄大学の学生にヒアリングしたところ、

「誰も意見しない中で、意見を言えば『できるじらー(優等生ぶっている)』と言われる」

「バイト先で、英語が喋れることが知れるといじめられるので、ひた隠しにしていた。ある日、外国人のお客様が困っていたので、つい英語で橋渡しをしてあげた。それ以後気まずい雰囲気が漂うようになって、間もなくそのバイトを辞めた」

「留学を目指して、英語の勉強に必死で取り組んでいた時期がある。すると『先生に気に入られようとしている』『頑張っている感だしてウザい』と言われ、すごく傷ついた。私にとっても、私の友人たちにとっても、こういう経験は日常的で、珍しくない」

沖縄から貧困がなくならない本当の理由(3)低所得の構造 | 樋口耕太郎 | 沖縄タイムス+プラス

沖縄に限ったことではなく、日本全国にこのような問題があります。

英語喋れたからイジメられるって、田舎の中学生みたいですね。むしろ英語喋れない方がダメじゃん。

何年か前に、大学院の研究室にいた沖縄出身の人が「絶対沖縄に戻らない」と言っていた意味がよくわかりました。

内輪揉めの青森ねぶた祭、観客動員数がピーク時の380万人から250万人へ

www.nikkei.com

ねぶた祭は東北三大祭の一つですが、観客動員数は1997年の380万人をピークに、20年で3割減になりました。

青森ねぶた祭を主催する、

  • 青森観光コンベンション協会
  • 青森商工会議所

と、

  • 青森市役所の関係者

が、仲が悪く、県外の30代の若手ねぶた制作者が市役所と合同で製作したスター・ウォーズねぶたの運行が商工会議所やコンベンション協会の猛反発によって中止になりました。

商工会議所の若井敬一郎会頭は、「脱原発を掲げる現市長と協力なんてできるわけない」と、確執を隠しもしない。コンベンション協会の奈良会長も、「市長はねぶたを愛していない」

(中略)

外からの意見を取り入れ、海外にも発信していかなければ、狭い青森の中で縮小均衡に陥るだけ。後藤氏は、青森市やコンベンション協会などの主催団体にも「現状維持でなにも変える姿勢が感じられない」と不満をもらす。

萎縮する祭り 動員250万人「青森ねぶた」の異変 :日本経済新聞

スター・ウォーズねぶたの運行がダメで、東芝がスポンサーのサザエさんのねぶたはOKという、非論理的で感情論で判断になることが理解に苦しみます。

こんなことは田舎の日常茶飯事ですが、青森県の現状を調べてみると沖縄に次ぐ経済問題がありました。

半数の若者が青森県を離れる

18歳や22歳の若い人たちは、高校や大学を卒業すると、労働条件の悪い青森県に愛想を尽かして、約半数以上は県外に進学や就職をします。

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平成21年青森県の人口 青森県企画政策部 年齢別県外転出入の状況

青森県の製造業の労働生産性は、全国平均の6割程度と低率を推移しています。

青森県の実労働時間は、全国平均より10時間多い全国最長の155時間(H24)で、給与水準は全国平均よりも2割低い253万円。2015年平均の失業率は沖縄県5.1%に次ぐワースト2位で4.5%となっています。

CNNやBBCにスターウォーズねぶたが取り上げられれば、AOMORI NEBUTAは世界に放送されてその広告効果は計り知れません。

商工会議所の会頭さんや、青森コンベンション協会の会長さんは、余程、青森以外の世界にご興味がなさ気なのか、毎年1%ずつ縮小する人口減で、超保守的な思考になってしまったのかも。

大都会東京の閉鎖性

地理的に都会だからと言って、オープンなマインドが広がっているわけでもありません。東京都議会は、新宿副都心の超都会的なところにありながらも、閉鎖的です。

newspicks.com

情報がブラックボックスなわけです。たとえば委員会も、傍聴はできますが、ネット公開すらされていません。

そもそも、重要な話し合いや意思決定は、委員会の前段階の、「理事会」といった会議体で行われますが、それらは非公開です。そうした会議体で決まったことを都民は何も知ることができないのです。

30代都議が語る「都議会というスーパーブラックボックス」

これを聞くと、どこかの山奥にある辺鄙な村の村議会のことかと思うかもしれませんが、東京都議会での話です。

理事会の閉鎖性は、やはり特定の人への権力集中と、治外法権的なルールの適用が問題になります。自浄作用が働かず第三者からの指摘も入りにくい構造になっているため、小池新東京都知事の手腕が試されそうです。

newspicks.com

何が問題か

共通して言えることは、

  • 実質的な権力者・有力者の倫理感覚の欠如
  • 外圧がかからず自浄作用が働かない
  • 地外法権的なルールが温存されている
  • 相互不信、信頼関係の欠如
  • リーダーの自身の立場を脅かす存在への恐怖心
  • コミュニティから仲間外れにされ孤立する恐怖心

その結果、ムラ社会にとって不都合な存在の烙印を押された人は、コミュニティから無視、嫌がらせ、モラハラ、パワハラを受けて精神的にダメージを受けます。

結果、現状維持が大切で新しいアイディアや改善提案の発言は、組織にとって波風を立てる要素で都合が悪いため、発言した本人が攻撃をうけます。

よそ者が来た場合

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よそ者とはムラに住む人以外全ての人です。よそ者は直ちにムラ全体に知れ渡り最大限警戒されます。また、そこに定住してもよそ者のレッテルは絶対になくなりません。

新しい価値観が入り込もうとしている場合

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ムラ社会では新しい価値観や、多様な価値観への寛容性はありません。ムラの権力者・有力者にとって自分の地位を揺るがす「悪の勢力」と見做され、徹底的に排除されます。

自分達と同類ではないとみなされた場合

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沖縄県では、英語を喋ると村八分にされます。英語を話せても絶対に沖縄では話してはいけません。

会社員が脱サラして、独立しようとしたときも同じような構図が出来上がります。

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同じく、正社員登用を勧められたら断りましょう。パート・アルバイト従業員の人たちと今までどおり時給693円の低賃金に甘んじていましょう。なぜなら彼らは仲間なのですから。一人だけ正社員になっても無視、嫌がらせされるだけです。

イジメが蔓延する学級

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イジメはよくないです。しかし、健全でないコミュニティは正義は働きません。

イジメ自体をなかったコトにする学校もあるので、自殺するぐらい精神的に追いつめられる前に転校しましょう。

序列を無視して自分の意見を発言した場合

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ムラの序列を無視して発言すると、ムラの和を乱したと見做されて村八分になります。意見は絶対に口外してはなりません。「空気読めない」と言われるのは、序列を無視した発言をするなという意味があります。

ムラに愛想を尽かした場合

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多様な価値観への寛容性がなく、現状維持が第一目標の排他的なムラは、若い人にとって居心地が悪いです。当然ながら都会へ移動していきます。ムラには人が少なくなって過疎化になりますが自業自得です。

国は地方創生の名の下、補助金を投入して若い人を呼びこもうとしていますが、なぜ過疎化になったのか、そもそも、活性化する必要があるのか、会計検査院は予算がムダになっていないか見ておく必要があります。

で、どうすればよいのか

自分が移動できる場合

そんなダメな組織やコミュニティを捨てて、早く新しいコミュニティへ移動しましょう。

転居する、転職する、転校するなどが考えられます。

人生は限られた時間しか無いので、組織が変革するのを待っていたら数百年かかるか分かりません。余程自分がリーダーとなって直接組織を変えられる立場にならない限りは、どうにもなりません。

特に、地方では高齢化が進み既得権益層が60代ともなれば、何か新しいことをするより現状維持に力学が働きます。その人が悪いというよりも、生物学的な脳の老化によるものなので仕方ありません。

そんな地域やコミュニティーは放っておけば、内向き思考で勝手に衰退するだけです。

時間は有限ですので、新天地を求めて、自分の強みを活かせて生きやすい場所へ移動しましょう。

今すぐ移動できない場合

何らかの事情を抱えて移動できない場合は、村八分にならないように人の目を気にしながら生きていくしかありません。

特に、閉鎖されたコミュニティでは、新しい価値観や考えは拒絶反応をもたらし、「変人」「頭がおかしい人」「都会かぶれ」などと言われるかもしれません。ひたすら目立たずに生きていきましょう。

現実のコミュニティや組織に愛想を尽かしていたら、ネット上で第3のコミュニティで仲間を増やしましょう。もちろんそこで稼ぐことも可能です。

もちろん、あなたの思想や思考をムラ社会の住民に明かしてはなりません。僻み、妬み、やっかみに遭い攻撃されるだけなので、何にもメリットがありません。

英語を使えることは、近隣に話してはいけませんし、留学しようとしていること、向学心があることは決して他言してはなりません。ひたすら自分はバカで向上心がないように装いましょう。

そして、時期を見計らってコミュニティーから離脱して、新しい世界へ移動しましょう。 

まとめ

  • 村八分は不健全な組織やコミュニティーが陥る、多様な価値観の存在を認めない意思の現れ
  • 実質的な権力者・有力者の倫理感覚の欠如
  • ムラ社会の住民は、コミュニティから孤立する恐怖が支配
  • 自分に合わないコミュニティから早めに抜けだそう

常に相互監視し、お互いを傷つけ合わないようにするために意見を言わない。新しいことをしない。させない。

組織やコミュニティとしての成長は皆無で、もろく壊れやすい『女子中学生のガラスの友情』のような社会が、閉鎖された組織や社会に広がっています。

それは、コミュニティからの孤立する恐怖が根源にあります。自分に自信がなく、自己のアイディンティティが確立していないと、新しい価値観や考え方、異なる意見に不寛容になって自分の殻に閉じこもります。

日本がいつまで経っても生産効率性が低いのは、会社というムラ社会の中で生き残るために身につけた、サラリーマンの防衛本能たる所以です。

人の流動性の少ない組織やコミュニティは、地方でも都会でも偏った発想や、偏屈な思想によってイノベーションが阻害され続けるでしょう。

ですから、競争力を失って組織が滅びる前に、そんな場所に見切りをつけて、転校や転職、転居した方が楽ですよ。

  

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最後までお読み頂きありがとうございます!

次回もお楽しみに!

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