こんにちは、ピコシムです。
電通の労基法違反がメディアを賑わせています。違法な働き方をさせて、過労死させたことが原因です。
そもそも、就業規則に則って会社が経営されていれば問題ないんじゃないですかね。
就業規則では、よく、
就業時間 平日9:00〜18:00 休憩時間12:00〜13:00
とあります。
就業規則は労働基準法のような強制力のある法律の下に定められた、会社の細かいルールを明文化したものです。
就業規則は、
労働基準法>労働協約>就業規則>雇用契約>上司の命令
の順に、効力があります。
残念ながら日本の場合は、上司の命令が最優先という不思議な構図になっているので、過労死やメンタルヘルスの問題が噴出しています。
企業が労働者一人一人に個別の契約を結ぶのは、非常に面倒ですので、就業規則というものがありますが労働者への周知が不十分です。
当然、労基法に違法する就業規則は定められないことになっていますが、労基署以外の第三者によるチェック機能が働いていないため、
就業時間を超えた違法な労働や、勤務時間外の副業禁止規定など、諸外国にないメチャクチャな労務管理がまかり通っています。
就業規則は従業員に周知されて初めて効力がある
もし就業規則がブラックボックス化してたら
- 就業規則に定められた会社のルールが労基法に違反しているか分からない
- 入社前に就業規則が見れないので、ホワイト企業かブラック企業か分からない
- 就業規則を他社と比較できないため、労務環境の良し悪しがわからない
- 労働時間外の副業禁止規定など、諸外国にない規則が当たり前のように存在する
など、さまざまな弊害があります。
以前、公務員の副業が日本で禁止されている件についてこのブログで取り上げました。
アメリカ大使館や、イギリス大使館に電話で問い合わせしました。
何カ国かの副業規制について調べてみた時もありました。
それから、半年後2016年12月に、国は公務員以外の民間企業のサラリーマンの副業について容認する方向になりました。
副業禁止規定は、厚生労働省のモデル就業規則から削除される方針ですが、企業が就業規則から副業禁止規定を削除するかどうか、誰がチェックするのか問題です。
だって、企業で働く人しか見ることができないのですから。
入社前に容易に就業規則を入手できない
採用後初めて就業規則を目にして、そんな筈じゃなかった!ってよく聞く話です。
これから働き始める人にとって、就業規則が非公開では、情報を持つ企業と個人で情報の非対称性が最も顕著な事例といえるでしょう。
例えば、企業が公開しているIR情報は、投資をするときに企業の経営状態を把握するための判断材料です。
就業規則の公開化は、入社しても良いか判断材料に十分なりえそうです。
もし、就業規則の公開がされていなければ、経営者側にとってみれば非常に有利です。採用者が入社後にしか就業規則が見られなければ、自社の独自ルールを社員に実質強要させやすいのでとっても便利です。
そもそも、就業規則や労基法を理解しないまま働いてもらえるので、やりたい放題ですよね。
就業規則って何か
就業規則とは
常時10人以上の従業員を使用する使用者は、労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条の規定により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督 署長に届け出なければならないとされています。
就業規則を変更する場合も同様に、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。
就業規則は10人以上の従業員のいる事業所では必ず作って、必ず労基署に届け出て、必ず守らなければいけません。
就業規則の内容
どこの企業でも、大体このテンプレートに沿って作られています。
- 就業規則
- 賃金規定
- 退職金規定
- 慶長期見舞金規定
- 旅費規定
- 育児休業規定
- 介護休業規定
- その他の規定
です。
働く側にとって、めっちゃ重要じゃないですか!
特に就業規則や賃金規程などはどの企業でも定められています。項目自体には企業のオリジナリティを埋め込む余地はありません。
もし、上場企業で、投資家向けのIR情報が非公開だったら、情報がなくて投資できませんよね?
IR情報が公開されてるのは、主に上場企業です。
そもそもIR情報とは、
投資家向けの広報活動のこと。企業を投資対象としてとらえる投資家が増えるとともに、経営判断の妥当性やその根拠を、企業側から投資家に対して広く明確に伝える必要性・責任が高まっている。
企業はIR活動を通じて株主、投資家、顧客などと意見交換することで、お互いの理解を深め、信頼関係を構築し、資本市場での正当な評価を得ることができます。逆に、外部からの厳しい評価を受けることで、経営の質を高めています。
経営情報は重要なな感じがしてきましたね。
IR情報と同じように就業規則を誰でも見れたほうが便利じゃないですか?
ところが、なぜか就業規則を公開している企業はほとんどありません。
なぜ就業規則が公開されていないのか
企業の就業規則が置かれている場所は、
- 企業内(休憩室スペースなど)
- 企業が所在する最寄りの労働基準監督署(非公開)
の二つです。
実質、就業規則が見れる場所は企業内のみということになります。
例えば、ある企業で労務問題が発生して、労働者本人、もしくは遺族から、労働基準監督署に就業規則の開示を情報公開請求したとします。
果たして、労働基準監督署からもらえるのでしょうか?
厚生労働省では、静岡労働基準監督署に就業規則を情報公開請求された件について、
平成24年厚生労働省は、特定会社の就業規則を非開示する妥当性があると答申しています。
就業規則が公にされた場合には,当該企業との競争上の地位にある他の企業に当該企業の人事及び労務の施策の一端を知られることになり,
企業経営上の利点や弱点を把握され,今後の労働力の確保,特に人材の獲得の上で対抗的ないし妨害的な措置や行動をとられ不利益を被ることがあり得ると考えられることから,
本件就業規則を開示することにより,当該企業の権利,競争上の地位その他正当な利益が侵害されるおそれがある
というべきであり,法5条2号イに定める不開示情報に該当するものである。
労働者の権利を企業がないがしろにするのは別に構わないけど、労働基準監督署が企業の権利を害することはできないから、非公開にするって中世っぽいですよね。
労基署はどっちの味方なのでしょう?
平成14年にも就業規則の不開示は妥当だと厚生労働省が答申しました。
特定運輸会社の就業規則(平成9年度届出)(以下「本件対象文書」いう。)につき, 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」又は「情報公開法」という。)5条2号イの規定により不開示とした決定は妥当である。
一個人の労働者やその家族よりも、会社の利益が優先されているようですね。
答申には法学者や、大学教授が関わっていますが、労働者保護の観点があまり感じられないのが日本の特徴です。
就業規則が入社する前に見れない問題
就業規則は、労基法をもとに作られた会社のルールですので、労働者にとっては重要な情報になります。
ところが、諸条件については採用前に知ることができませんので、面接時に質問することになります。
募集時の条件と、採用後の条件が異なることは非常に多くあります。労働者は自己資金が少ないので、いちいち企業に楯突いていたらすぐに失業です。
もし面接官に就業規則見せてって聞いたら
学生「御社の就業規則を閲覧させてください」
面接官「はい、結構です。もう帰ってください」
ってなってめちゃくちゃ不利ですよね。
学生は萎縮しますから、最も重要な労働条件の細かい部分を知ることができません。
結果、最重要である就業規則を見ることができない殆どの労働者は、採用後に初めて知ることとなるのでした。
最近では、労働者の権利意識が高まり、企業も訴訟リスクが増えてきました。
企業は無用なトラブルを防ぐために、ウェブサイトで就業規則を公開してみてはいかがでしょうか。
ウェブ等で就業規則が公開されている企業・団体
国立大学法人化されて、誰でも閲覧可能になっています。
東京大学
一橋大学
民間企業はほとんど就業規則が公開されていません。
その中でも先進的取り組みをしている企業がありました。
株式会社トランスリミット
なぜ公開するのか
- 当社の社内規程に対する健全性、透明性を確保する
- 外部から当社に関する理解を図る
- 社内規程のベストプラクティスとなる
- オープンソースにより、より良い社内規程を生む
デンキヤギ株式会社
GitHub - DenkiYagi/EmployeeHandbook: デンキヤギ株式会社 就業規則
メディプライム株式会社
電通は就業規則を公開してモデルケースになってみては?
電通は、22時に社内の電気を一斉に消灯するという子供騙しよりも↓
現在の就業規則を公開してみてはいかがでしょうか。
就業規則を公開すれば、否応なしに第三者の目にさらされることになります。
第三者から就業規則が正しく運用されているか、チェックされますので経営者に及び腰の労働組合なんかよりはるかに実効性のある対策になるのではないでしょうか。
最後までお読み頂きありがとうございます!
次回もお楽しみに!