こんにちは、ピコシムです。
少し話題が古くなりましたが、
東京工業大学 大隅良典 栄誉教授が生物学でノーベル賞を受賞しました。
大変名誉なことですね。
さて、ツイッターでは、科学者に与えられる予算が少なすぎと話題になっています。
日本の基礎科学研究を支え「役に立つのか」喧々諤々議論され配分される科研費は、年間2,500億円弱で運営されてるのに、東京オリンピックの運営費は「役に立つのか」という議論も大してなされず、3兆円まで膨れ上がるそうじゃないですか。科研費12年分。大隅さん、ここに「ゆとり」ありますよ
— Lilac (@Lilaclog) October 4, 2016
確か、iPS細胞(人工多能性幹細胞)でノーベル賞を取った山中伸弥教授も、研究予算不足のためにチャリティーマラソンを走っていました。研究予算ってそんな足りないのか気になったので調べてみました。
科研費と運営交付金
研究者は基本的にお金が無ければ研究できません。ですので、研究者は個別に予算を獲得する必要があります。それが科研費です。
もうひとつは運営交付金で大学の運営に必要な人件費、施設費、設備、学内行事等などに充てられます。
科研費
大学院生なら科研費の申請が通るかどうかで、その後の研究人生が大きく左右される、めちゃくちゃ重要な資金です。
科研費とは、文科省の下部組織である、独立行政法人日本学術振興会という組織が行う事業の一つの『科学研究費助成事業』のことをいいます。
H27年度(2015年度)は、2,318億円運営されています。科研費を中心とした5つの事業に拠出されています。
資金の99.8%は国から交付されていて、研究者への資金提供を行っています。
科研費の場合、1つの研究課題につき平均で216万円ほど貰えますが、誰でも貰えるわけじゃなく、新規に採用される割合は29%です。
科研費の総額は1672億円です。そのうち新規採択分は674億円。
H27年度(2015年度)科研費では80,995件の研究がされています。
こんなにたくさん研究されていたんですね。
参考:科研費(基金分) 配分状況一覧(平成27年度 新規採択分)
ちなみに、科研費を研究代表者の人件費や謝礼金、懇親会のアルコール購入費などに使うことは禁止されています。
認められる経費は、研究に必要な研究者の雇用費用、実験装置の購入、材料費、参考文献等の書籍購入費、消耗品費、交通費などに使えます。
不正を働くと、細かな罰則規定があり研究者人生を断たれる仕組みになっています。
国会議員や地方議員にも同じ制度を導入してみたら?
参考:科研費ハンドブック~より良く使っていただくために~ (研究者用)2015年度版
運営交付金
国から資金をもらう「運営交付金」は、
1兆945億円(43.9%)です。
次の章で詳しく説明します。
国立大学って運営資金いくら貰ってるの?
国立大学は、全国に86大学あります。
その他に複数の大学が共同研究する組織が4つのあります。
H28年度の運営予算は、2兆 4,941億円です。
そのうち、入学金や授業料、大学附属病院で稼いだ独自収入は、
1兆3,995円(56.1%)
国から資金をもらう「運営交付金」は、
1兆945億円(43.9%)。
これを、90の大学と研究機構に配分されています。
どこの大学が一番多く運営交付金をゲットできているの?
- 東京大学 804億円
- 京都大学 548億円
- 東北大学 456億円
- 大阪大学 436億円
- 九州大学 416億円
- 筑波大学 406億円
- 北海道大 362億円
- 名古屋大 316億円
- 広島大学 248億円
- 東京工業大 213億円
旧帝国大学が上位にランクインしています。東京大学は804億円と他の大学の追随を許しません。
大学の教員の研究時間が減少
教員の労働時間は増えているのに研究時間が減っています。
彼らの研究活動に充てられる時間は、減少する一方です。
大学の教員は教授、准教授、講師、助教で構成されています。
例えば、教授の場合、研究時間に使った時間数は、
H14年度(2002年)1220時間
H20年度(2008年)1033時間
で、187時間(▲15.3%)も減少しています。
一方で、雑務時間は上昇していて、
H14年度(2002年)590時間
H20年度(2008年)616時間(+4.4%)
2008年度(2008年4月1日~2009年3月31日)は、土日祝日を除いた平日は247日あるので、単純に割ると
1日に11.6時間働いていて、
研究時間は、4.9時間 → 4.1時間
教育活動は、2.5時間 → 3.2時間
社会サービス活動は、1.0時間 → 1.7時間
雑務活動は、2.4時間 → 2.5時間
これも、予算を獲得するためには仕方がありません。内部向け(文科省や大学内)への報告書は面倒でも書かないと大変です。もちろん学生の指導や、その他の社会貢献も求められています。
文科省からの大学の運営交付金は増えてるの?減ってるの?
大学の運営交付金は年々減らされています。
2004年に1兆2400億円
2016年は1兆945億円
12年前と比較すると12%減。1470億円削減されました。
で、削減した分何に使われているのかって?
年々増加する、社会保障費32兆円と国債費23兆円の返還です。
科学振興に関係する予算は、その他の文教及び科学振興費、防衛関係費等に含まれていて、
2000年(平成12年)22.5兆円
2016年(平成28年)19.9兆円です。
2.6兆円を減らすことが出来ました。
ですが、社会保障費は毎年1兆円近く増えているので、穴埋めしないといけません。
科学よりも命の方が大切なのですが、全ての教育費を削っても穴埋め出来ません。
大学の運営費を12年前の2004年より1500億円節約しても、毎年1兆円近く増える医療費はまだまだ増え続けます。
高齢化社会で予算を削るにも、選挙で投票してくれる高齢者に関係する予算は、政治家にとって票田ですので、手をつけたくありません。
というわけで、日本の国立大学の大学予算編成は、文科省の予算次第で、どう考えてもこの先お先真っ暗というお話でした。
将来、科学者は予算が無い中で自腹で研究しなきゃならず、若い科学者にとって日本の先行きはノーベル賞なんて夢のまた夢になるでしょう。
最後までお読み頂きありがとうございます!
次回もお楽しみに!