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社会の出来事を「なぜ?だから何なの?」の視点で探ります

なぜ奴隷制度が誕生したのか 現代の格差問題と功利主義の視点から

社会

こんにちは、ピコシムです。

前回は、古代ローマでは、戦争捕虜や奴隷が産んだ子供を、奴隷として扱うことは倫理的に正しいことなのかを考えました。

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今回は、『なぜ古代ローマ時代に奴隷制度が誕生したか』、そして『現代の格差と功利主義』について切り込んでいきます。

奴隷制度

奴隷のしつけ方によると、

奴隷制度は社会を支える基本原理の一つである。(中略)

奴隷は最初から絶対服従を強いられている。奴隷は家族を持たず、結婚の権利と義務から切り離され、存在理由そのものを主人から押しつけられ、(中略)

その意味では奴隷状態とは「社会的死」であり、だからこそ主人への絶対服従が当然とされる。

奴隷のしつけ方 序文 主人であれ

奴隷制度ができた背景は、ローマ市民が社会基盤を維持するために、知的労働(会計士、医師、教師)・肉体労働(農場労働者、鉱山労働者)を必要としていたことです。

ローマ市民の快適な生活を支えるために、奴隷の存在がありました。

現代に日本では

現代日本に置き換えると、

正社員の高賃金体系を支えるために、非正規労働者の存在があると言い換えられます。

もしくは、

高齢者への年金支払い、社会保険制度を安定させるために、現役世代が、返ってくる保証のない可能性のある年金や、高い社会保険料を負担する仕組みになっています。

また、日本では正社員雇用の流動性がないため、転職が容易ではありません。転職の選択肢は実質無い(とされている)わけですから、経営者や上司への絶対服従が当然とされています。

しかも正社員で入った組織から離脱した途端、非正規雇用(奴隷状態)に転落して経済的に困窮する確立が格段に上がるので、八方ふさがりです。

特にコモディティ化(価格以外に他社との差別化が図れない)産業の場合は、賃金上昇は労働力不足意外に見込めません。

奴隷と非正規社員の婚姻率の類似点

古代ローマの奴隷は、主人の判断なしに結婚する権利はなく、家族を持つことも許されませんでした。具体的な数値は本書では出てきませんが、奴隷であることは法的に結婚と見做されず、主人の良心によって奴隷に家族をもたせるかどうかが決まっていました。

現代では、非正規雇用の男性は、経済的な理由から結婚する時期が遅くなる、もしくは結婚しない(できない)人が増加しています。

女性は非正規社員でも未婚率は変わりませんが、

30代男性の場合未婚率は、

正規雇用者  30%

非正規雇用者 70%

非正規社員で結婚しない(できない)男性の存在は、同時に結婚しない(できない)女性を増やす原因になります。

このデータから分かるように、古代ローマの奴隷のように、非正規雇用者の男性は、法的には結婚の自由があるものの、経済的制約から間接的に結婚が制限され、結婚適齢期に結婚できない男性の存在が明らかになっています。

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(出典:男女共同参画白書(概要版) 平成26年版 | 内閣府男女共同参画局)

非正規雇用は古代ローマの奴隷と同じで、現代の社会基盤を支えるために必要とされています。

一方で少子化対策は(半ば諦めつつあるけど)急務です。

男女の非正規雇用、正規社員の長時間労働と、生活残業をしないといけない賃金体系など、労働環境の見直しは、保育所の整備と同じぐらい改善しなければいけない問題ですが、遡上に上がることは稀です。

なぜでしょうか?

奴隷制と功利主義

このような奴隷制の功利主義的側面は、時代が変わっても無くならないことを示唆しています。

 功利主義とは、

「最大多数の最大幸福」を基本原理とする倫理思想。

つまり善悪の基準は、より多くの人がより多くの快楽とより少ない苦痛を得ることにあるとする。

功利主義とは - はてなキーワード

ということです。

奴隷の苦痛がローマ市民の快楽を上回っていれば、「最大多数の最大幸福」を基本理念とする功利主義に一致して、奴隷制度は正しいことになります。

ハーバード大学のサンデル教授は、このような功利主義的見方へ反論するヒントを私たちに教えてくれます。

ここまでに功利主義に対する2つの反論がでた。

1つは功利主義が個人の権利、もしくは少数派の権利を尊重していないというもの。
そして、もう1つは人々の好み、あるいは価値を合計することをできない、というもの。

JUSTICE 第2回「命に値段をつけることに正義はあるか」「喜びを測定して出した結論は公平か」ハーバード大学:サンデル教授:白熱教室 | VISUALECTURE

結局のところ、労働の本質は2000年前と変わらず、

政府や経営者層の功利主義的な発想が続けば、現在の労働関係の法制度は変わらないし、労働環境は悪いままです。

 

古代ローマの奴隷は報酬として、食事が与えられ、

今日の労働者は労働契約を締結して(経営者が守っているかどうかは別にして)その対価として給与報酬が与えられることになっています。

 

命の値段

時給で働く場合や、低賃金で働く場合、それは「その人の命の値段」を安く提供しているといえます。

2010年には、名古屋家庭裁判所の裁判官が執筆した論文「逸失利益と過失相殺をめぐる諸問題」が話題になりました。

若い非正規労働者が増える現状について「自分の都合の良い時間に働けるなどの理由で就業形態を選ぶ者が少なくない」「長期の職業キャリアを十分に展望することなく、安易に職業を選択している」とする国の労働経済白書を引用。

こうした状況を踏まえ、正社員の若者と非正規労働者の若者の逸失利益には差を設けるべきだとの考えを示した。

asahi.com(朝日新聞社):「命の値段」、非正規労働者は低い? 裁判官論文が波紋 - 働けど貧困

非正規雇用で低賃金で働くのは、多少経済の浮き沈みはあるものの、その人の自己責任なんだから、万が一その人が死亡したときの命の値段が安くなるのは当然でしょ!と裁判官は論説しています。

でも、奴隷状態である労働者や、とりわけ非正規雇用者の問題は、社会システムの問題です。

レールから外れた後の個人で生き方を選択できない状況は、無理ゲーをするのと変わりません。

自暴自棄になって自殺するか暴走する人が出てきます。

冒頭で『奴隷制は古代ローマの全時代を通して社会の基盤で、あまりにも当然のものだった』という古代ローマと全く同じ状況です。歴史は繰り返されています。

 

じゃあどうすればいいの?

『奴隷のしつけ方』から読み解けることは、

  • 2000年経っても人間の本質は変わらない(使う側と使われる側に分かれる)
  • 使う側にいても油断していると地位を転落して労働者(奴隷)になる
  • 資産を所持していなければ、なるべく良い労働条件の良い産業で働く

個人でできること

  • 労働条件の良い産業に行くために、知識や技能、学歴を身につける
  • 労働条件の良い成長産業に転職
  • 労働条件の良い産業でなるべく早く資本を蓄積して労働者(奴隷)から資本家(主人)になる
  • レールから外れてしまったら、サラリーマンになるのを諦める(自分でビジネスを所有する)
  • パトロンを探す

国ができること

  • ILO(国際労働機関)強制労働禁止条約の批准
  • 奴隷状態にある労働者の保護、劣悪な労働環境の改善指導
  • 正規雇用市場の流動化(解雇規制の緩和)
  • 同一労働同一賃金による不合理な格差是正

技術革新で変わりそうなもの

  • 人工知能(AI)が発達して人間の代わりに仕事をするようになる
    バス、電車の運転、タクシー、トラックの運転、経理業務、コールセンター、警備員、工場労働者など →退屈な仕事が減る

これって、労働者が失業するってことじゃないの?

AIの導入で労働からの開放か、大失業時代か

もし、人工知能が産業に導入されてると、人間は必要とされなくなり、労働から開放されるのでしょうか?

野村総合研究所では10年~20年後には労働人口の49%が、人工知能やロボットが仕事をする未来が来ると予想しています。

日本の就業人口は6500万人(2016年労働力調査)です。

10年後の2030年(14年後)の就業人口予測は、6250万人減少します。

現在より250万人分労働人口が減ります。

日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に | 野村総合研究所(NRI)

一方、AI技術によって、2030年には3185万人分の仕事が消滅します。

労働人口は2030年には△250万人になる予定ですので、

6250万人の労働力に対して、2935万人が失業します。

首都圏の労働人口が2300万人ですので、彼らが全員無職になるぐらい相当なインパクトをもたらします。

もちろん、AI技術をメンテする労働者が必要になるので、その分野での雇用の創出は数百万人はあるでしょう。

 

現時点では、人々がAI技術の導入で労働から開放されるかは分かっていません。

 

もし、AI技術の利益が労働者層に還元されなければ、

2030年の失業率は40%以上の燦々たる未来が待ち受けています。

南アフリカやギリシャでは、失業率25%(2015年)で大問題になっているので、40%以上の失業率では社会は大混乱になっています。

治安の大幅な悪化、社会インフラの老朽化で道路、橋、病院、発電所、警察、消防、病院、学校が機能が停止して、一部の富裕層だけが住む洗練された街と、それ以外に分けられているかもしれません。

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ベーシックインカムが導入されて危機を回避?

でも、もしベーシックインカムが導入されれば、多くの人は労働から開放されます。

人類史上初めての出来事です。

ずっと家にいてもいいし、ずっと遊んでいてもいい。暇なら働いてもいい状態になります。

そのためには、社会システムの大転換が必要になります。

スイスではベーシックインカムが2016年6月の国民投票で反対票7割で否決しました。

スイスで最低限の所得保障めぐる国民投票、反対多数で否決 | ロイター

 

ただし、今後自動運転車の普及や、面倒な事務作業が自動化が徐々にされていくと、人々の意識に変化が訪れるかもしれません。

 

古代ローマ市民は労働から開放されていましたが、奴隷はその身分を自ら変えることはできませんでした。

一方、現代の日本にも奴隷がいると言われています。

奴隷のように働かせた経営者が逮捕されても、ニュースになることは滅多にありません。

 

なぜ、日本では労働法違反が横行しても、ニュースになりにくいのでしょうか。

 

次回は、知られざる日本の暗部、『国連から是正勧告、日本の奴隷状態の29万人の存在』について。

ILO(国際労働機関)の条約未批准と、日本人の(労働者を含めた)人権意識の希薄さの視点から探ります。

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本日ブログのテーマ参考文献

奴隷のしつけ方

奴隷のしつけ方

 

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最後までお読み頂きありがとうございます!

次回もお楽しみに!

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